「モイちゃんはおそらく……」

ふとした時に先生が発したその言葉。モイのリンパ腫発覚から4年。最初の完全寛解から3年半。再寛解から2年8ヶ月。
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膵炎の再燃疑惑でモイが病院に駆け込んだのが先々週の1月15日(金)。その翌週、1月22日(金)にウニのペットドックで病院を訪れた際に、モイの一週間の経過報告を先生にした。2日ほどは本調子ではなく気持ち悪そうに口をクチャクチャすることもあったこと、幸い制吐剤プリンペランが効いたのかその後吐くことはなかったが、22日の朝に一週間ぶりに吐いたこと、そこでもプリンペランを飲ませたら落ち着いて追い吐きするには至らずに済んだこと、など。

吐きが続いている時は飲み薬だと薬ごと吐き戻されることもあるので、病院ではセレニアなど注射タイプの制吐剤を使うが、自宅にそれを常備しておくわけにはいかない。プリンペランを頓服薬として使うのは問題ないとのことだったので、今後のために10錠ほど処方してもらった。

「膵炎は長く付き合っていく病気なのでなるべく負担の少ないものから、つまり、マイルドなプリンペランで抑えられるなら先ずはそれで抑えておいた方がよいでしょう」と先生。吐き気に対しプリンペランやセレニアが効かなくなってきたら、膵臓の炎症そのものを抑え免疫抑制作用のあるステロイドを使う、という順番が望ましいようだ。
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前にも聞いたが、慢性膵炎は免疫病の一種で、膵臓に集まったリンパ球が炎症を起こし、くすぶっていて、時に激しくなったり治まったりを繰り返すものだそうで、その都度対処療法で抑えるしか今のところ手がないのだそうだ。
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では膵炎に根本的な治療法はないのかと聞いてみると、

「もう一歩進めるなら幹細胞治療という手段はあります。皮下脂肪から多機能幹細胞(IPS細胞みたいなイメージ)を取って、それを増やし身体に戻します。それが一日かけて体内を移動し、膵炎など炎症のある場所に集まります。炎症物質を鎮める炎症調整作用があって免疫病など不必要な炎症に効果的です。」

この説明から想像するに、モイが長いことやっていた免疫療法(活性化リンパ球を培養)に似ている感じだろうか。ところが続けて先生曰く、

「腫瘍を患っている場合は薦められません。幹細胞は血管をたくさん作る作用があるので腫瘍があると腫瘍の周りに栄養血管を作りやすくしてしまう。なので担がん患者には薦められないんです。」と。
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その時だった。続けて、 

「ただ、モイちゃんはおそらくリンパ腫を克服しているので、今リンパ腫は無いですけど、ちょっと(その治療法は)怖いなというのはありますね。今は膵炎でそこまで追い詰められているわけではないので対処療法でその都度クリアしていくのがいいと思います。」と。

膵炎の話の流れでふと出た言葉ではあるけれど、先生の「無い」の言い方に少しアクセントが付いていたのがうれしかった。「克服」、心の中に大きな付箋を貼った瞬間。

いつ再燃するか分からない不安と長年付き合ってきたモイは万が一のことを考えて三種混合ワクチンも2017年からもう打っていない。腫瘍細胞を刺激する可能性のあることは今後もできるだけ避けたい。フードもできればグレインフリーが望ましい。
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こんな時に限ってモイの通院日ではなかったので目の前にモイは居なくて、替わりにそれを聞いていたのはペットドック待ちでキャリーケースの中で怯えていたウニ。ウニよ、ナースとしてしっかり聞いてくれたかな。帰ったらお兄ちゃんに伝えるんだよ。「先生ね、おそらくモイちゃんはリンパ腫を克服してるって言ってたよ!」って。
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そして家族みんなでささやかなお祝いをしよう。喜びを噛み締めて。
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みなさんのおかげでなんとかここまでは漕ぎ着けました。4年間に渡り沢山の祈りをありがとうございます。モイは幸せものです。この先「完治」という言葉を先生が使ってくれるかは分からないけれど、僕ら家族はいただいた大きな力を時に放ちながら、これからも逞しく一瞬一瞬を生きていく。ただそれだけです。